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January 02, 2018

1.夢小説【犬食べる作】

 幼いころから大人になるまで、ずっとずっと私だけを助けてくれるヒーローがいる。
 小さいころから転びそうになると身体を支えてくれたり、手を怪我するとばんそうこうを貼ってくれたり。そんな私だけのヒーロー。
 小学生の時、給食費が無くなったとクラスで問題になったことがある。その時に疑われたのが私だった。その日は具合が悪くて保健室で休んでいた私だけがアリバイがなく、クラスメイト全員に疑われてしまった。その時も僕だけのヒーローがかばってくれた。
 中学生の時、不良にカツアゲされそうになった時も私だけのヒーローが守ってくれた。でも私だけのヒーローは弱いから二人で不良に殴られた。情けないけど勇気だけは一人前の私だけのヒーロー。
 高校生の時、一緒にプールに遊びに行った時は、泳げないのに無理していいところを見せようと泳ごうとして足がつったヒーローを私が助けてあげた。普段は助けられる側なのに、その時は助けてあげる側に守れてなんだか嬉しかった。
 大学生の時、疎遠になっちゃったけど連絡は取り合っていた。私だけのヒーローは「色んな人間を助けたい」なんて夢を教えてくれた。私だけのヒーローは、私だけのヒーローからみんなのヒーローになろうとしていた。
 そして大人になって、私だけのヒーローはみんなのヒーローになった。日夜犯罪を取り締まるために頑張って働いている。すっかり私だけのヒーローじゃなくなったという現実に若干の嫉妬はあったが、それでも立派になったヒーローのことが誇らしかった。
 だけどみんなのヒーローは私の前へ再び現れた。
 そして彼はいった。
「結婚しよう」
 幼馴染の彼。また私だけのヒーローになった彼。とんでもないヒーロー。
 そんな彼のことが私は大好きだ。

January 02, 2018

2.指揮棒マン 

キュウリって緑だよな?

常識で考えれば、そこんなことはわかる。

ありきたりなスーパーのありきたりなキュウリを、手に取って考え込む。
目の前に見えるものはオレンジというよりは黒く明るみは無い。

俺は、俗に言う緑という感覚を知らない。
しがないヒーローで食いつないでいる日常ではあるが
この鎖は、非常に俺の枷になっており、20数年俺を苦しめてきた。

例えば、そうだな。
キュウリ怪人が出たとしよう。

そこらにいる一般市民は「緑のバケモノがぁー!!」等と凄惨な叫び声を挙げるが
俺は現場に駆けつけても、緑のバケモノがどれか識別できない。
形でギリギリ判別しているが、誤パンチでも一般市民に浴びせてしまえば
ヒーロ免許剥奪も免れない。そうなった時は生活保護のワープアに逆戻りだ。

そうなった時に、自分の死期をそりゃもう早めることになるし平穏な生活は送れない。

あ、よく考えたらヒーローに平穏な生活が訪れたら、ワープアみたいなもんか。

そんなことを考えながら、キュウリを棚に戻した。

四季は、色付いてもう夏だ。

緑にはつくづく縁のない俺だが、LINE友達ができた。
みどりちゃんだ。みどりという名前でグッときたね。

色がわからん俺にも春が来たってか。

そんな妄想をしながら、色が想像しやすい48円の納豆を買った。

日が暮れかかっている。どこからか声が聞こえた。

「キャーーー!!緑のゴツゴツしたバケモノよーーーー!!」

やれやれとニヤつきながら、俺は言った。

「どこだ怪人!!俺は指揮棒マン!!」

自慢のタクトは、ターゲットを判別できずに震えていた。

January 02, 2018

3.悪役(未完成)

 ヒーローがあふれかえり、イレギュラーがレギュラーに、特別が陳腐に、そんな時代で人々が注目したのは悪役だった。そんなヒーロー混沌時代に生れた一人の悪役(ヒーロー)。
私利私欲に塗れたヒーローもどきを、聖人君主の皮を被った悪逆非道なヒーローを、嬲り、凌辱を行いヒーローを奪う。これを人々は救いと受け取るか、さらなる混沌への兆しと受け取るか。すべてはこの悪役(ヒーロー)
の活躍次第。
 ビーッビーッと大音量のサイレンが響き渡る。聞きなれた音に合わせて人たちは悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。スライムのような化け物がビルを壊そうとする。そこに一人のヒーローが現れる。
「私が現れたからにはもう大丈夫だ!皆の安寧を取り戻すことをここに約束しよう!」
サイレンに劣らない声を出し、救いを宣言するのは主人公になりえない只のヒーロー。そのヒーローの声に安堵と傲慢の声をあげる。
やっちゃえー! そんな悪役倒せ―!さっさと終わらせてくれ 私たちの平和を守って!
「ありがとう!ありがとう!みんな!さあ、この悪役が正義の名の元に倒れるのを見ていてくれ!」
ヘルイヤー言霊!とダサい技名を叫び、倒!壊!と続けて叫ぶ。次の瞬間、スライムの体がパァン!と音を立て、四方八方に飛び散る。飛び散った液体が意志を保ち、ヘルイヤー言霊が必殺技のヒーローは慌てふためく。
「な、なんだ!?粉々に砕けてしまえば倒れるのではないのか!?」
慌てて必殺技を叫ぼうとして止まる。次の瞬間にはスライムの体の破片は消え去った。そしてこの物語の悪役(ヒーロー)が現れる。
「大丈夫ですよ皆さん!もうスライムは消えました!このヒーローの方のご協力で簡単に倒せました!」
人々から歓声があがる。ありがとー!ヒーロー炉融(ろゆう)! 人々が宣言通りの安寧を手にした。しかし、納得のいかない顔の者が一人いる。
「なぜ邪魔をした?あの程度私一人でも倒せた」
それを聞いた炉融はこう答える。
「ごめんなさい。焦っていたものでしたので、手伝おうかと…」
それを聞いたヘルイヤーは怪訝な顔を直し、ヒーローの模範のような笑顔で答える。

January 02, 2018

4.あいつは(未完成)

 あいつと出会ったのは、ほんの少し前のことだ。
俺が道端に落ちている吸殻を拾い、横を歩いてたおじさんに
勢いよく投げつけたあの瞬間、あいつが後ろから声をかけてきた。
 「君、なにしとんの?」
急に声が聞こえ、振り返るとそこには長身で痩せ気味で、軽やかな趣
いや儚い悲しげな顔が印象強く、俺の心に止まった。
俺はおじさんに投げつけた事を見られ怒られると思い、質問にすぐ答
えられなかった。しょうもない事で他人に咎められるとか情けない。
すると、あいつは

January 02, 2018

5.彼はきっと(未完成)

割れた。
落ちてきた。
日光を反射した破片がばらばらと目の前に散らばり、綺麗だった。
数十秒前まで僕を見下していた視線は一斉に彼を見上げることとなった。
窓枠の向こうに見えた冷たい目は、正直周りの人たちのものと同じに見える。
騒ぎを聞きつけた大人たちが、びしょびしょに濡れ座りこんでいる僕を見つけたようだった。
人気のない校舎裏、転がるバケツ、一人を囲む数人の生徒とガラスの破片。
後々彼は問題児として校内で知らない人はいない問題児とされるわけだが、彼はきっと

January 02, 2018

6.健ちゃんみっちゃん(未完成)

題 とんでもないヒーロー目指したい

 

 

ある晴れた日のことであった。
自転車を走らせていたら突然飛び出してきた人物がいた。
「うおっ!」
変な声が出たがそんなことはさておき、飛び出してきた人物はこちらが誰かを認めると、表情をやたら明るくして自転車のカゴを掴んできた。

こいつの名前はケンジ。
「みっちゃん!俺とヒーロー同盟作ろうぜ!」
みっちゃんと言うのは俺のことで、こいつとは生まれた時からの幼馴染。
名前がミツオなので、こいつだけじゃなく周りからもみっちゃんと呼ばれている。
また変なことを言い出してきやがった、と思った。
「今度は何見たの」

ケンジはとかく影響されやすい。
この間はテレビで見た消防士が格好良かったから消防士になるんだと火事の現場を探して走り回っていたし、
数ヶ月前なんかは戦隊もののドラマでリーダーが格好よく仲間を助けたシーンを見て、何故かクラスメイト数人と女の子のスカートめくりをして怒られていた。
何回か俺も付き合わされてその結果に嫌になったりするんだけど、やってる最中は楽しいのだ。

そんなケンジが言ったのがさっきのセリフである。
この時点で俺は少しの嫌な予感と半数以上のワクワク感を覚えていた。
「ヒーロー同盟作ってカツアゲしてるやつをこらしめようぜ!」
本当に一体何を見てそんなことを思いついたんだろう。
「カツアゲって・・カツアゲしてるなんて噂でも聞いたことないけど」
「だからこれから探すんだろ、カツアゲしてるやつをさ」
そう言って真剣な目になったケンジは、カゴを揺らしてくる。説得してるつもりなのだろうか。
「こける!倒れるからやめろ!」
「よし、そしたら俺後ろ乗るから。みっちゃん運転してくれよ」
「えー俺運転かよーー」
一度言い出したら聞かない男なのがケンジだ。
今の時代ごカツアゲするやつなんかいないだろ、と思いながらも渋々自転車を走らせる。
舗装されてない道を走ってると、ケンジがさっそく何か見つけたようで、指差す。
ふとそちらを見ると、顔なじみの駄菓子屋の息子・

January 02, 2018

7.K13iN078

 20XX年、地球は宇宙から飛来した謎の生命体による侵略を受けていた。人類の危機に瀕した地球人たちは国境を越えて結託し、有志の協力と最先端の技術によってある一つの生物兵器を作り出す。
 -「K13iN078」。それが僕の、今の名前だ。
 「目覚めたばかりで悪いが、現在の地球はほぼ壊滅状態に近い。出動してくれ!人類の存続は君の手にかかっている!」
白衣の男はそう言って、薄暗いシェルターから僕を送り出した。立ちはだかるのは、悪臭と粘液を放つ巨大な触手。普通の人間なら近づくことすらできないだろう。僕は渡された機器のスイッチを押した。

 気づくと僕は、僕を見下ろしていた。目の前には自分の触手。…触手?
 まさか…これは。
「入れ替わってるうぅ!?」
僕の叫びは怪物の咆哮となって響いたが、その後順調に地球は救われた。

January 02, 2018

8.仮面ライダーX【優勝作品】

「いい子にしてたら、ヒーローがゆうくんのところに来てくれるからね。」 小さいときから、母にこう言われて育ってきた。仮面ライダーXにひどく傾倒していたらしく、それを本気で信じていた。動機はどうであれ、そのおかげで真面目な子に育ったと思う。もちろん、ヒーローなんて来るわけがないとわかるのに時間はかからなかった。おそらく小学校に入って少ししてさすがにそうだと気づいてはいただろう。 それでも心の何処かでは、母のその言葉が残っていて、その言い聞かせが嘘だとわかっていても、いい子でいようと心がけていた。来るはずのないヒーローを頭のなかで勝手に思い描いて。 その魔法もしだいに薄れていった。 高校、大学と至極普通な進路を歩んだ俺は地元の企業で働いていた。仕事もさほど支障はなかった。小さいときから真面目に算数に励んでいたために、計算は得意だったので経理の仕事はあっていた。 ある日俺は、ある女性とよく食事に行き、関わりを持つようになった。彼女は自分の話をよく聞いてくれて、仮面ライダーXの話も楽しそうに聞いてくれた。 でもその姿は嘘だった。 しばらくして、その人と二人で歩いていると目の前にいかつい男が現れた。ああ、美人局か。うかつだった。何も考えずにべらべら喋っていた俺は弱みを握られ、とんでもないお金を請求された。出すあてなんてない。 どうしよう、どうしよう。ふと、魔が差してしまった。会社のお金を。盗んでしまった。美人局にお金は払って事なきを得たが、その後すぐに自分のしてしまった過ちの重さにに気づいた。 数日間、何もすることもできずに時が立ってしまった。 「いい子にしてたら、ヒーローがゆうくんのところに来てくれるからね。」 この言葉が思い出された。ああ、もう、素直に言おう。今ならきっとなんとかなる……そう思い、会社に出社すると、社内がざわついていた。泥棒が入ったらしい。監視カメラには仮面ライダーXのお面をかぶったグループが金品をかっさらっていったらしい。被害は相当だった。 ああ、とんでもないヒーローだ。

January 02, 2018

9.ゴキブリ

 そのヒトはいつもご飯をくれた。
 安らぎの空間を与えてくれた。
 そのヒトは間違いなく、私にとってのヒーローだった。

 生まれながらにして私の命は決して受け入れられることは無かった。
何故だかは分からない。物心ついた頃には親はなく、
歩き回れるようになった頃には恐ろしい形相で睨まれ、罵詈雑言を浴びせられるようになっていた。
 身体が大きくなる頃には命が狙われるようになった。
怯えすら伺える表情で大きな棒を振り回し、追いかけられた。
 そんな日々に嫌気がさしていた。

 そのヒトは静かで、あまりしゃべらないヒトだった。
命からがら逃げ込んだ先に、そのヒトはいた。
満身創痍だった私はもうだめかと思ったけれど、そのヒトは
じっと私を見ただけで、何もしてこなかった。
私がその辺にあるご飯に手をつけても、そのヒトは殴ってくるどころか、
スッと目を細め私が食べ終わるのを見ているだけだった。

 静かな彼との穏やかな日々は今でもまだ続いている。
私はいたずらに彼の顔にそっと触れ、そっと身を寄せる。
いつか彼に恩返しをしたい。そう思いながら、愛を囁いた。

 


「うわっ何この部屋……ちょっとあんた!!身体にゴキブリが乗ってる!!!!」

 

 見慣れないヒトが突然部屋に侵入し、よくわからないことを叫んでいた。

January 02, 2018

10.俺は几帳面だ(未完成)

とんでもないヒーロー

時をさかのぼれば3年前、いや、おかしかったのはもっと昔からだ。

-飛べない-

兆候はあった。

俺は几帳面だ。
毎日のルーチンは決まってなければならない。
いつもと同じ時間に置きいつもと同じコーヒーを飲みいつもと同じスーツでいつもと同じ通勤経路で出勤する。
空を飛ぶ時も、いつも右足から一にのサンで飛ぶ。

だが三年前のある日、2歩目の左足でつんのめった。
それでも「サン!」でなんとか帳尻を合わせてたが、月に一回ぐらいそんな風につんのめる日があった。

俺は几帳面だ。
君たちと同じように、だいたいの同僚は自分の勤め先の就業規約など覚えちゃいないだろうが、
俺はその何百条もある就業規約にしっかりと目を通し、暗誦し、記憶していた。

ヒーロー規約第121項
~ヒーローは空を飛べること、ないしはそれに類する見栄えの良い移動手段を有すること~

そして今日、いくら頑張っても飛べない。

今となっては昨日までどうやって飛べていたのかがわからないくらいだ。
まあ、よくよく考えれば走り方や腕の上げ方、呼吸の仕方やそれこそ心臓の動かし方なんてのは、
普段からやり方を意識し理解してやっているわけではなく、死ぬ時なんてのもそんな風に死ぬのかもしれないな。

見栄えの良い移動手段か。そんなものは持っていない。
同僚にはバイクやリムジン、発射台なんてものを持っているやつもいるが、
そんな交通渋滞での遅延のリスクがあるものに俺は興味はなかった。なぜなら俺は几帳面だから。

さて。どうしたもんかな。

-20分後-

ふう。なんとか出勤時刻にはなんとか間に合ったが、二度とこんなぎりぎりの出勤はごめんだ。
常々自分はめんどくさい性格だと思っていたが、今日ばかりは几帳面でよかった。
就業規則第150項にあんな項目があったのを覚えていてよかった。

ヒーロー規約第121項
~ヒーローはぎりぎりに駆けつけ「待たせたな」と言うこと~

(思い浮かばなかった。時間切れ)

January 02, 2018

11.精神病ヒーロー

それはとんでもないヒーローだった。
突然通行人をぶん殴り泥棒だと警官に突き出す。店の窓ガラスを割り麻薬を売っているとわめき散らす。
果てにはテロリストをひっとらえるために鉄道を拳で止めてひと騒ぎを起こす。
しかしそれらは事実無根証拠不在の罪。つまり冤罪だ。ヒーローに殴られた人達は無実であった。
なぜヒーローはそんなことをしてしまうのか。重たい精神病と警察は話した。理想と現実の区別がヒーローにはつかないだと。
ゆえヒーローとの会話は困難である。それでも私はヒーローに聞いてみた。
「アナタは無実の人を捕まえている自覚はありますか?」
ヒーローはボロボロの赤いマフラーを靡かせ喋る。少し怒りをこめてヒーローは喋った。
「俺が捕まえているのは悪党だ」
「でも警察や裁判所は無罪だと言っています」
「俺が悪だと思った奴が悪だ」
とんでもないジャイアニズムな発言だった。
「それではアナタがずっと正しいことになる。そんなことは誰も許さない」
「俺を許さない奴が悪だろう。俺もそいつを許さない。見つけ次第ぶっとばすだろうな」
ヒーローは首をひと回しして「じゃあな」と言い、飛び去ってしまった。
私は思う。独裁政治は独裁者が有能でなければならない。
その点ヒーローが君臨するには評判が悪かった。彼と出会えば殴り飛ばされないほうがおかしいぐらいだ。
町の人々は決まって彼を避ける。または監視して暴れないように誘導する。人災扱いである。
子供から卵を投げつけられた話も聞いたたことがある。すぐにヒーローから反撃をくらったらしい。
この町にヒーローはいらない、とされている。
そうとも。ここは腐ったマフィアがのさばる町。泥棒やスリが平然と歩き店では当然のように麻薬を売っている。
警察や裁判官も賄賂で腐臭を撒き散らす。
それでもこの町にはヒーローが必要だ。
重い精神病を患ったと噂を撒き散らされたヒーロだけが哀れな平民達が願う最後の希望なのだ。

January 02, 2018

12.受験生

 深夜二時、いつものようにコンビニ前には金髪男二人がたむろしていた。
「お前今何万持ってる?」
「えー、それ今俺に聞く?」
 男二人はうんこ座りをし、コンビニ前の駐車場でそんなことを喋っている。するとそこにコンビニに立ち寄ろうとした紺色はんてんを着たいかにも受験生な男が二人の横を通りかかった。
「おいお前!」
 たむろ男の片割れが受験生に声をかける。
「はいっ!なんでしょうか……」
 受験生は急に声をかけられ恐る恐るたむろ男達に尋ねる。
「今何円持ってる?」
 たむろ男の片割れはニヤつく。
「えっ!」
 受験生はそのままはんてんの右ポケットに手をやった。瞬間、たむろ男は立ち上がり受験生に近寄る。
「ねぇ、僕たち今金ないんだよねぇー……」
 たむろ男達は受験生の前に立つ。
「だからさぁー今……」
 パァーーーーン!
 深夜のコンビニ前に銃声が響いた。受験生の右手には改造拳銃が握られている。
「ひいっ……」
 受験生に喋りかけようとしたたむろ男の頭が吹き飛び、残ったたむろ男のかすかな悲鳴がその場で起こった。
 残ったたむろ男は尻もちをついてガタガタ震える。
「いつもうっせぇんだよ!」
 受験生は残ったたむろ男にも改造拳銃を向ける。受験生はコンビニ裏に住んでいる学生だった。

January 02, 2018

13.健ちゃん

小さなヒーロー

「・・・・・・・・・、・・・・・・シク・・・シク」
微かに蝉の声が聞こえていたが少し肌寒かったのを覚えている。
「・・・オーイ、・・・大丈夫か・・・」
小さな声で私を呼んでいる
「助けてよー・・・」
声は返ってこなかった。
足に力が入らず女の子座りした私は腰まで水に浸かっていた。
水はとても冷たく感覚が麻痺していく。
怖くなって泣きながら目を瞑りお母さんのことを思い出す。
前の夏に出て行った母を
健ちゃんは隣の家に住む同級生で唯一の友達だった。
遊び場は晴れていれば裏山と相場は決まっていて、裏山のことはすべて知り尽くしていると思い込んでいた。
思えば私はこのころから健ちゃんのことが好きだったのかもしれない。
「おい!大丈夫か!」
真っ暗だった私の世界に光が届いた。
「じーちゃん呼んで来たから大丈夫だ!!もう少しの辛抱だ!」
1時間経って外に出られたとき沢山の大人が拍手をしていた。
それが妙に暖かくて大声で泣いた。

 

 

 

 

 

 

そんな健ちゃんは昨日浮気をした。

たいメッセージや注目すべきポイントを書いて、 訪問者の興味を惹きつけましょう。

January 02, 2018

14.薬品

「だからズルでもしなきゃ、世の中を変えるなんて無理なわけですよ」
正義感の強い、ないし一般常識を平均以上持ち合わせた人間からしたら、屁理屈、なのだろう。この男の論理は。
「でも僕がこの薬を使わなかったら、君はあのまま、あのチンピラたちのなすがまま、犯され嬲られ長い間元の生活は送れなかっただろう?」
「助けてもらったことは、もちろんありがとうだよ、でも」
「でも?」
15分前。短い人生の終わりを真剣に覚悟した、その瞬間、男は私の眼の前に現れた。
「君、俺の好みの顔してる 助けてあげるよ」
ショルダーバッグから取り出したのは、注射針と、試験官に入った透明な液体。
慣れた手つきで注射器を液で満たし、迷うことなく男は針を右腕に刺した。
13分前。私を取り囲んでいた3人の柄の悪い男達は、適度に死なない程度に血を流し、
真冬のアスファルトの上に伸びていた。

「いわゆる禁止薬物。多分名前知らないよ」
「覚せい剤?」
「そんなしょうもないのじゃない」
「犯罪者」
「こいつらが?」
呆れる。私が男に危機を救ってくれたことを感謝しているのは本当だ。でも、
この男が目の前で得体の知れない薬を使ったこと、それが本当に不気味で怖かった。
「オリンピックってさ、所謂ドーピング検査ってのがあるよね。
肉体の限界を底上げして、パフォーマンスを上げる役目をする薬物の使用の禁止、
でもこれっておかしいと思わない?」
「思わない」
「お金を払って試合を見に来ているお客は、非日常を求めている。
選手はそのお金で選手生活をしている。他にもスポンサーとか、いろいろあるだろうけど」
「だったらそのお客さんたちは、もっとエキサイティングなものが見たいと思うんだよ」
「それがズルをしていい言い訳にはならない」
「覚せい剤を使ったミュージシャンは名曲を作り、生活を豊かにした。
mdmaを飲んで、徹夜で仕事をし続けたクリエイターは時代を前進させる創作をした。」
「だからズルでもしなきゃ、世の中変えるなんて無理なんですよ」
男の言うことは、あたかも本当に正しいことのように脳にスッと入ってくる。
「きっといつか、ジャブ中になって死ぬわ」
「それがなに?」
とっさに男が返す。
「死んだら意味ないじゃん、どれだけ生きてる間にいいことしても、
ヒーローが死んじゃったら、ヒーローは何のために体に鞭打って頑張ってきたのよ」
「だって俺が死んだ後なんて、俺が知りようもないもの」

January 02, 2018

15.黒幕は彼

幼馴染の彼女はいつもいじめられていた。小中学校で人気者だった僕は彼女にどんな影響を与えるかも知らずに、仲良く遊んでいた。いつものように遊んでいたある日のこと。彼女が、夢が泣きながら僕のところに来た。
「ごめんなさい。いつも柊くんが迷惑してるのも知らずに、ごめんなさい。」
大体予想はついた。女子グループの嫉妬だろう。彼女が僕と居るのが気に入らなくて離れなきゃひどいことをすると言ったのだろう。それに夢の所持品が紛失することが増えていた。奏水さんたちが笑っていたのを知っている。ミーハーなあいつのことだ。僕を彼女にすれば人気が出ると思ったのだろう。
「大丈夫。迷惑なんてしてないよ。誰にいじめられたの?奏水さんのグループ?」
彼女を優しく抱きしめ、慰める。夢は小さくうなずいた。
次の日から、物をなくすことはなくなった。夢は僕にありがとうといって頬を赤らめていた。

「柊くん?何か考え事?」
夢の言葉ではっとする。
「うん。夢が告白してきたときのこと思い出してた。」
そういうと夢が顔を赤くし、照れ隠しにぺちぺちと肩をたたいてくる。今となってはいじめられることもなく、普通の幸せな高校生活を送っている。気が済んだのか叩くのをやめる。
「柊くんがいてくれてほんとによかった。いなかったらきっと、私、つらくて死んじゃってたかもしれない。柊くんは私のヒーローだね。」
やわらかな笑みを僕に向ける。
「おおげさだなあ」
奏水は僕が居なかったら君になにもしないよ。君が死ぬこともないよ。あれ全部僕のやったことだから。奏水にキス一回をご褒美に頼んで、喜んで承諾したし。人気者は、ヒーローはつらいなあ。

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